食のこばなし

カキ(牡蠣)

NO.46

古代から食べられてきた海の幸

人類がカキを食べ始めたのは、紀元前1世紀ということです。日本では縄文時代ごろから食べられていたようで、多くの貝塚から殻が発見されています。ハマグリに次いで多く食べられていたようです。

ナポレオン、バルザック、ビスマルクなど世界の偉人たちもカキが好物だったことが知られています。日本人では武田信玄や頼山陽などがカキの愛好家だったと言われています。

北アメリカでは、ヨーロッパから移住した人々が持ち込んだ食文化によってカキの生食が普及し、アメリカの海岸沿いの地方では、生ガキを売り物にした「オイスターバー」と呼ばれるレストランもあり、バカでかいカキを食べた思い出があります。

 

カキの養殖技術が世界に広がる

カキは稚貝のころ、海の中を漂流していますが、すみかとして定着する場所を見つけると、生涯その場所から動かないと言われています。広島でアサリの養殖場を囲っていた竹の枝に、カキが付着するのをヒントにして養殖を始めたとも言われています。そうした習性を利用して養殖が盛んになったのです。世界中多くの地域でカキの養殖が広がっています。

日本では室町時代には養殖が行われるようになったと言われていますが、日本でカキの養殖を始めた記録は、1673年、第4代将軍、徳川家綱の時代です。

大坂では明治時代まで広島から来るかき船が土佐堀、堂島、道頓堀などで船上での行商を行っていました。

カキの養殖で、日本は世界トップの技術を持っており、日本産のカキの稚貝が世界各国に輸出されているほどです。

 

栄養満点の「海のミルク」

カキが世界中で食べられているのは、美味しいからですが同時に「カキは海のミルク」と言われるほど栄養分に富んでいるからです。ぷんとしたカキ独特のあの磯の香りをかぐと、滋養十分という感じがしてきます。

まずビタミンB12や鉄分が豊富です。ホルモンの分泌には不可欠の亜鉛が豊富です。亜鉛は味覚障害や目の障害の予防にもなります。脳の働きを活性化するタウリンやグリコーゲンもあります。

カルシウムは卵並み、リンは牛乳以上、ナトリウムやカリウムは卵の倍、ビタミンCは牛乳の倍もあるのです。マグロやイワシなどの青い魚に多く含まれ、脳細胞を元気にさせて頭の回転を良くするとして話題になった「ドコサヘキサエン酸」(DHA)という脂肪酸も多く含まれています。カキは消化もいいし、完全栄養食と言われるほどですから、本当に栄養源食物の優等生というわけです。

 

カキの旬はやっぱり冬

日本では昔から「サクラが散ったらカキを食べるな」という言い伝えがあります。カキの旬は、やはり冬の寒い時期なのです。外国では「Rの付かない月には、カキを食べるな」という言い伝えがあります。1月から12月まで英語で書くと、Rのつかない月は5月から8月まで「May, June, July, August」です。

この時期のカキは産卵期に入るので、栄養素が減少して味が落ちるし、夏の時期は高温で腐敗しやすいので食中毒を起こしやすくなるからです。

日本ではいろいろな料理法があります。カキのおいしい料理法では、おそらく日本は世界一ではないでしょうか。その中でも、我が家で食べる自慢の料理は、自称「カキしゃぶ」と呼んでいるカキの鍋物があります。

野菜や豆腐を水炊きした鍋に、各自、カキをハシでつまんで鍋に入れ、しゃぶしゃぶの要領でしばらく煮て、適度なところで鍋からあげてポン酢に浸して食べます。

こうするとカキの煮すぎがなく、独自の甘みの出たふっくらして美味しいカキが楽しめるというわけです。カキフライも筆者の好物ですが、知人の報道記者はカキフライを食べると胃が痛くなります。原因はわかりませんが、それでも好物なので食べています。食べたあと、胃のあたりをおさえて「痛いけどうまいなぁ」と言うのが何ともユーモラスでした。

 

生食には食中毒に注意です

日本ではカキの生食は産地以外では一般化せず、もっぱら酢締めや加熱調理で食されました。しかしカキの食材としての加工技術が発達したため、生食も普及しています。

一般的に魚介の生食をしない欧米の食文化ですが、カキは例外的に生食文化が発達した食材であり、古代ローマ時代から食べていました。生ガキはフランス料理のオードブルで出てくることがよくあります。

煮ても焼いても美味しいカキですが、生食も本当に美味しい貝です。中華料理でもカキを材料にしたものはいろいろありますが、欠かせないのは調味料のオイスターソースです。これは発酵させて取ったエキスに調味料を加えたもので、うまみと風味があります。

広島地方では、お雑煮にカキを使っています。カキは「賀喜」とも書いており、「福をかき寄せる」として縁起をかついでいます。

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

カキの食品成分

出典:食品成分データベース

牡蠣の養殖量の都道府県ランキング(平成30年)

順位 都道府県 収穫量 割合
1 広島県 104,014t 58.90%
2 宮城県 26,086t 14.80%
3位 岡山県 15,510t 8.80%
4位 兵庫県 8,652t 4.90%
5位 岩手県 6,646t 3.80%
6位 北海道 4,083t 2.30%
7位 三重県 3,459t 2.00%
8位 福岡県 1,809t 1.00%
9位 石川県 1,602t 0.90%
10位 長崎県 1,348t 0.80%
11位 香川県 900t 0.50%
12位 愛媛県 656t 0.40%
13位 新潟県 581t 0.30%
14位 静岡県 293t 0.20%
15位 佐賀県 282t 0.20%
16位 京都府 214t 0.10%
17位 島根県 199t 0.10%
18位 大分県 143t 0.10%
19位 熊本県 59t 0.00%
20位 宮崎県 48t 0.00%
21位 福井県 26t 0.00%
22位 山口県 19t 0.00%
23位 神奈川県 X X
24位 愛知県 X X
25位 大阪府 X X
26位 和歌山県 X X
27位 鳥取県 X X
28位 徳島県 X X
29位 鹿児島県 X X
30位 青森県
31位 秋田県
32位 山形県
33位 福島県
34位 茨城県
35位 栃木県
36位 群馬県
37位 埼玉県
38位 千葉県
39位 東京都
40位 富山県
41位 山梨県
42位 長野県
43位 岐阜県
44位 滋賀県
45位 奈良県
46位 高知県
47位 沖縄県

(※3)データが非公表の都道府県は「X」、事業所がない都道府県は「-」となっています。

出典:地域の入れ物

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