食のこばなし

カキ(柿)

NO.15

グルジアにもあった日本の柿の木

旧ソ連のグルジア地方(現在のジョージア)の長寿村へ取材に行ったときのことです。村の長老の家に案内されると屋敷の前庭に、たわわに実をつけた柿の木がありました。樹木の姿も実のなり具合も日本の柿とそっくりです。

「同じものが日本にもあるよ」と言ったら、村の長老がびっくりしていました。「この果物は、この地方しかないと思っていた」そうです。

村には、百歳以上の長寿者が、ごろごろいました。ブドウから作ったワインとウオッカが絶品であり、ケフィールと呼ばれる牛乳を発酵させたヨーグルトも独特の風味でした。肉と野菜のバランスのとれた食事とケフィール、そして適度なアルコール飲料が長寿の秘訣のようでした。たわわになったあの柿も健康には良かったのではないでしょうか。

柿の原産地は、東アジアであり古文書によると紀元前二世紀には、中国で栽培されていたそうです。日本には飛鳥時代に、モモ、ウメなどと一緒にわたってきました。元々は渋柿だけだったようですが、突然変異で甘柿が出てきたのを見逃さず、これを果樹として栽培されるようになったようです。こんなところにも日本人の知恵が見られます。

史実によると江戸時代の中ごろに欧米に渡っていった柿が定着し、ヨーロッパの一部では日本原産と思われているそうで、学名にも「kaki」と記載されました。植物種で和名が学名に記載されているだけでなく、多くの国で柿は「カキ」の名になっています。イタリア特派員になった同僚記者に聞いた話ですが、ローマの果物店に並んでいる柿をみて「この果物はイタリア語でなんていうの?」と聞いたら店員さんが「カキだよ」というのでびっくりしたそうです。柿は日本産の国際果物なのです。

渋みはタンニン

柿は樹も葉もタネも昔から、私たちの生活に役立ってきました。特にタネは、漢方薬の材料として古来からよく使われ、柿の葉には殺菌作用があるので美肌を保つのに有効だといわれています。柿の樹は、材質がかたいのでタンスや机などの家具にしてきました。柿のヘタをせんじて飲むと、しゃっくり止めになるし、利尿剤や嘔吐止めにもなるそうです。

多くの果物の皮には、たくさんの栄養素が含まれているように、柿の実の皮には多くの栄養素があります。あの鮮やかなオレンジ色の皮と実には、抗癌作用があるとして注目されているカロチンです。体内に取り込まれると代謝されて、ビタミンAになるのです。

柿の渋みはタンニンです。甘柿にも渋柿にも含まれているもので、血管を強くして血圧を下げる働きがあります。高血圧や脳卒中の予防にいいようです。タンニンは、お茶にも含まれていますが、渋柿の方が多く含まれているようです。

「柿が赤くなると医者が青くなる」。どこかで聞いたセリフですが、ヨーロッパでは「トマトが赤くなると医者が青くなる」の言い伝えがあります。どちらも同じ意味の言い伝えであり、柿はビタミン、ミネラルが豊富なので医者いらずの万能薬として重宝された時代の言葉でした。

 

柿(こけら)落としと柿はどんな関係?

新築なった劇場での初公演は出演者も大物をそろえ、はなばなしく開演されこれを「こけら落とし」言っています。こけら落としを漢字で書くと「柿落とし」となります。何でだろうかと調べてみたらこんなことでした。

元々、こけらという字は柿と同じでしたが、右側の市の部分は四画で書くそうです。しかし出来上がった字は、見た目は同じです。こけら(柿)とカキ(柿)は同じ字に見えるためか字典でも区別されなくなり、そのまま今でも使われているようです。

子供のころ、渋柿を農家のワラ束の中に隠しておき、渋が抜けたら食べることがはやりました。しかし、なかなか渋が抜けません。少しくらい渋くても、甘味もあるので食べてしまいました。すると大便に渋みが出て、ひどい便秘になってしまったのです。当時の便秘の特効薬は、すったゴマでした。祖母が作ったすりゴマを、泣きながら便器にまたがって食べた記憶があります。すぐに効くわけないのに、大人の言うことを聞かないで大騒ぎしたほろ苦い思い出があります。

甘柿の代表種は、富有・次郎・御所が御三家のようです。いずれも地域の人たちが丹念に育成してきた伝統種です。しかし筆者は、渋柿を材料にした干し柿も好物であり、シーズンになると必ず名産品を買い求めて楽しんでいます。

 

文:ばば れんせい  絵:とよだ ゆき

 

 

柿の生産量の都道府県ランキング(平成30年)

順位 都道府県 収穫量 割合
01位 和歌山県 39,200t 18.80%
02位 奈良県 28,300t 13.60%
03位 福岡県 15,900t 7.60%
04位 岐阜県 13,900t 6.70%
05位 愛知県 13,500t 6.50%
06位 新潟県 9,720t 4.70%
07位 長野県 9,360t 4.50%
08位 福島県 9,340t 4.50%
09位 愛媛県 8,360t 4.00%
10位 山梨県 7,440t 3.60%
11位 山形県 6,860t 3.30%
12位 静岡県 4,520t 2.20%
13位 三重県 4,250t 2.00%
14位 茨城県 3,100t 1.50%
15位 広島県 2,610t 1.30%
16位 岡山県 2,450t 1.20%
17位 鳥取県 2,290t 1.10%
18位 島根県 2,060t 1.00%
19位 熊本県 1,960t 0.90%
20位 富山県 1,710t 0.80%
21位 香川県 1,200t 0.60%
22位 石川県 1,160t 0.60%
23位 宮城県 1,020t 0.50%
24位 福井県 946t 0.50%
北海道
青森県
岩手県
秋田県
栃木県
群馬県
埼玉県
千葉県
東京都
神奈川県
滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
山口県
徳島県
高知県
佐賀県
長崎県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県

出典:地域の入れ物 https://region-case.com/rank-h30-product-persimmon/

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