七面鳥
NO.17
アメリカ感謝祭の最大のご馳走
毎年11月の第4木曜日に、アメリカ大統領府のホワイトハウスで七面鳥と大統領との奇妙な儀式が行われます。今年もトランプ大統領は、先の大統領選をめぐる激しい攻防のさなかに、七面鳥を前に「恩赦する」儀式をメディアの前で上機嫌で演出をしていました。
アメリカでは感謝際のときに連邦刑務所に入っている受刑者に恩赦を与えることが慣例になっています。その際、ついでに感謝祭の最大のご馳走として出てくる七面鳥を恩赦して、料理から逃れさせるという儀式です。トランプ大統領は1羽の七面鳥の命を恩赦で救いましたが、同時に多数の受刑者を恩赦したそうです。
さて、筆者が七面鳥をはじめて見たのは、小学校に入学して間もなくでした。級友に連れられて下校途中に七面鳥を飼育している家に行きました。広い庭の一角に金網で仕切った飼育場があり、 そこにぽつんと一羽の七面鳥が飼育されていました。
ニワトリよりはるかに大きく、顔からクビにかけて鮮やかな赤い色をした鳥であり、こちらに近づいてきたときは思わずおびえました。そこは悪ガキどもですから、金網の間から棒を入れて七面鳥を威嚇すると、 七面鳥は怒って向かってきます。そのときクビの赤いところの色が変わります。いたずら坊主どもは、それを見たさに長い時間遊んだものでした。
野生種を飼育して肉用に改良
七面鳥はもともと北アメリカの北緯20-40度付近に分布する野生種でしたが、メキシコのアステカ人によって肉用として飼育されるようになったといいます。肉付きがよく、特に胸の肉が厚く、オスの成鳥で15キロになるのもいます。食用としては生後7か月から8か月の若鳥がいいそうで、冬が近づき脂がのってうまみが増してきたころに料理に出てきます。
ヨーロッパ人が七面鳥を食べるようになったのは、1492年のコロンブスのアメリカ大陸発見以降ということです。それまでヨーロッパではブタ、 イノシシ、羊が主な肉食用の動物でした。いまでもヨーロッパのレストランの飾り窓には、ヒイラギとリボンで装飾し、口の中に果物を入れたブタの頭を見ることがあります。これは中世からの名残なのでしょう。
コロンプスの大陸発見後、アメリカ大陸にヨーロッパ人が移住して野生の七面鳥を捕獲して飼育するようになり、一羽丸ごとローストする料理法も編み出しました。これがヨーロッパに逆輸入され、世界中に広がっていきました。
アメリカ・シアトルのアメリカ人の友人宅にホームステイしたとき、ちょうど感謝祭にぶつかり七面鳥の家庭料理をいただきました。七面鳥のおなかの中にソーセージ、レバー、タマネギのみじん切り、クリ、パンなどがたっぷりと詰められており、これを丸ごとこんがりと焼いてありました。これを甘酸っばいクランズベリーソースにつけて食べましたが、七面鳥の美味しさを初めて味わいました。
翌日の朝食にスープが出てきましたが、これは前夜に食べた七面鳥のガラで作ったスープであり、塩とコショウだけのシンプルな味付けなのに絶品でした。アメリカでは、初代大統領のジョージ・ワシントン以来、大統領が「七面鳥への感謝式」を行うことを恒例にしています。感謝際のときアメリカでは、約5千万羽の七面鳥が料理されると言われています。感謝祭のときには、家族や親族がみんな集まって七面鳥料理を食べながら感謝するという習わしになったのです。
七面鳥の世界一の生産国はアメリカですが、第2位は意外やフランスです。フランスは世界一の七面鳥輸出国になっています。七面鳥はカモよりも多い食材になっているようです。
ボーリングの「ターキー」の名付け親はオランダ人
ボーリングファンなら誰でも知っていますが、3回連続ストライクを出すと「ターキー」と言います。ターキーは英語で七面鳥のことです。なぜ、こんな言い方をするのでしょうか。ネットで調べてみると、命名者はボーリング好きのオランダ人と出ていました。それによるとオランダ人はある日、インディアンが1本の矢で3羽の野生の七面鳥を串刺しに射止める光景を目撃しました。オランダ人は、これはストライクを連続3回出すのと同じくらい難しいと考え、ボーリングに「ターキー」を持ち込んだということです。
文:ばばれんせい 絵:みねしまともこ
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