食のこばなし

ヨーグルト

NO.104

アミノ酸が豊富に含まれている

牛乳に乳酸菌を加え、生育しやすい温度と環境で発酵させてヨーグルトを作ります。あまりに簡単なので自分でヨーグルトを作ったことがありましたが、うまくできたので感激したものです。乳酸菌による牛乳の発酵によって栄養成分の質を高め、しかもアミノ酸やぺプチドに分解されるので、消化吸収が良くなります。ヨーグルトは牛乳の3倍から4倍のアミノ酸が含まれています。発酵の元になる乳酸菌は、1857年、微生物学の始祖とされる、フランスの科学者ルイ・パスツールによって発見されました。

当時、パスツール研にロシア人のエリー・メチニコフという生物学者がいました。彼は非常に研究熱心であり、免疫、梅毒、各種の病原毒素などの研究に取り組んでいました。実績が認められて副所長にまで出世し、1908年には白血球のような食細胞の研究が認められ、ノーベル生理学医学賞を受賞しました。

健康飲料として世界中に広がる

メチニコフは、動脈硬化や老化のことを研究しているとき、乳酸菌を体内に取り込むと動脈硬化が予防でき、不老長寿になるのではないかと考えていました。そこで彼は、長寿者がいる地域を調べました。ブルガリアのある地方では、100歳を超える老人が多数生活していることを発見し、その食生活を調べてみました。長寿者たちは例外なくヨーグルトを常食していました。メチニコフは、これこそが長寿の秘訣であると考えました。ヨーグルトに含まれている乳酸菌が腸内に入ると腸内の腐敗菌を追い出して腸内腐敗を防止し、動脈硬化を予防して長寿になると考えたのです。メチニコフは、自分でヨーグルトを作り、毎日規則正しく食べ、そして周囲の人々にもすすめました。ノーベル賞受賞者の言うことですからたちまち世界中にこの話が広がり、ヨーグルトを食べると長寿になるという言い伝えが出来上がったのです。ただメチニコフは、残念なことに尿毒症にかかり、71歳で死亡しています。しかしメチニコフの誕生日の5月15日を「ヨーグルトの日」としています。

 

ヨーグルトは腸を健康にする

腸内には、ヒトの健康にとって有益な善玉菌と、有害な働きをする悪玉菌と呼んでいる細菌が生息しています。善玉菌の代表はビフィズス菌などの乳酸菌で、悪玉菌の代表はウェルシュ菌などの腐敗菌です。ヨーグルと乳酸菌を摂取することにより、腸内環境を整えて免疫力を高めることがわかってきました。ヨーグルトの乳酸菌が作り出す有機酸は悪玉菌の増殖を抑え、腸内腐敗を防ぎ、腸管を刺激して腸の蠕動を活発にします。

さらに、ヨーグルトに含まれる乳糖が善玉菌の栄養源となってその増殖を助けます。善玉菌の代表格であるビフィズス菌の好物は、乳糖とオリゴ糖であり、ヨーグルトには乳糖が含まれています。

腸が健康であれば、便秘もなく、肌荒れを防ぎ、美肌効果もあります。ビタミンB2、ビタミンDなども豊富です。高血圧を抑制するアンジオテンシン変換阻害酵素、葉酸(ビタミンM)も含まれ、造血作用に重要な因子となっています。

 

吸収されやすいカルシウム

カルシウムが豊富なので、骨粗鬆症を防ぎます。ヨーグルトに含まれているリンとカルシウムの比率が1対1であり、これは骨の中の比率とほぼ同じなので、体内での利用率が良いのです。

牛乳・乳製品のカルシウムは小魚、野菜などに比べて吸収されやすいのですが、ヨーグルトの場合はさらに効率がアップするというわけです。乳酸菌の発酵によって生成された乳酸とカルシウムが結合して乳酸カルシウムとなり、消化吸収がされやすい形になるためです。

ヨーグルトが日本国内で売り出されたのは1905年、広島のチチヤス乳業ということです。一般に普及したのは戦後で、1950年明治乳業のハネーヨーグルトが発売されたことから広がったようです。

ヨーグルトはトルコ語で「攪拌すること」を意味するヨウルト(yogurt)からつけられた名前です。牛乳から作るのが一般的ですが、世界各地ではヤギ、羊、水牛、馬、駱駝などの乳から作られたヨーグルトもあります。

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

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