食のこばなし

ミョウガ

NO.99

日陰の場所に群生する

ミョウガを食べるときに時々、思い出す光景があります。子どもころ仙台の広い屋敷の叔母の家で育った筆者は、よく「ミョウガを採っておいで」とお使いをいいつかいました。ミョウガが群生している裏庭の日陰の場所に、恐る恐る行って両手にあふれるほど採って帰ってきました。

「ミョウガを食べ過ぎると、もの忘れがひどくなるよ」

ミョウガ好きの筆者を見ている叔母は、いつもこう言っていました。それがどういう意味か大人になって分かったときには感動しました。

文献によると江戸時代の東京には、ミョウガの群生地があちこちにあったそうです。いまでも「茗荷谷(みょうがだに)」という地名が残っています。ミョウガは、ショウガ科の多年草で日本の代表的なハーブなのです。

日本食を思い出させる代表的な食材

お料理の薬味、香辛料として利用されたり、刺身のつまにも使われています。昔は、不眠症に効くとして処方されたこともあったようですが、真偽のほどはわかりません。

原産地は熱帯アジアで、日本には古い時代に中国から入ってきました。しかし、外国の料理でミョウガを使っているのはほとんどないようです。筆者の友人の中には、ミョウガと醤油を持参して海外に出る人がいます。日本食が恋しくなったらミョウガと醤油を西洋料理にあしらって食べると、たちまち食欲を取り戻すのだそうです。

おまんじゅうをミョウガの葉で包む郷土料理もありますが、ミョウガの葉は香りがいいし、ほとんど虫がつかないので、葉に傷や穴がないからでもあるのでしょう。

ミョウガの葉の匂いには、虫を寄せ付けない効果があるし、刻みミョウガにはバクテリアが繁殖しないということです。また、暑さで弱った胃腸を整えてくれるとも言われています。

ミョウガのお料理ですが、夏の代表的な野菜であるキュウリやナスと相性がいいのが最大の特長です。キュウリもみにミョウガを入れた即席漬物や、ナスとミョウガの味噌汁も夏の風物詩でした。

今では一年中、スーパーの店頭に並んでいますが、価格がそれなりに高いのを見ると、貴重な食材になってしまったようです。

夏の食欲不振には、刻んだミョウガとかつお節に醤油をたらし、ご飯と一緒に食べると絶品です。酢の物にもよく利用されます。ミョウガの甘酢漬けは、一度にたくさん作って保存することもできます。

ミョウガのてんぷら、淡黄色をしたミョウガの花の甘酢漬けやてんぷらも風味があります。

薄く切ってお吸い物に浮かべると、あの独特の香りが楽しめます。筆者の得意料理は、ミョウガとナスの入った煮ソーメンです。

まず、鶏のひき肉にミョウガとナスを入れた醬油汁を作ります。その後で、ミツバをたっぷり入れた卵とじを作ってたれの出来上がりです。

あつあつのたれを、おわんに入れたソーメンの上からかけて食べますが、夏の暑い盛りに汗をふきふき食べると、食欲不振も一気に解消です。

料理研究家の竹本英美先生に教えていただいたのは、高知県地方のミョウガ寿司です。ミョウガを熱湯にくぐらせると鮮やかなピンク色に染まります。これを甘酢につけてシャリにのせたのがミョウガ寿司。しゃきっとした歯ざわりとさっぱりした味は、寿司の食事の仕上げのネタにぴったりです。

 

釈迦の弟子のエピソード                                 

ところで、ミョウガを食べ過ぎると物忘れがひどくなる―これって本当でしょうか。本当なら大変なので、百科辞典で調べてみたことがありました。

釈迦の弟子によく物忘れをする僧がいたそうです。この僧が自分名前も忘れてしまうので、名札を首からぶら下げていました。結局その僧は生涯名札を背負って生活しました。

その僧が亡くなった後、埋葬したお墓にそれまで見たこともない植物が生えてきました。墓の主は終生、名札をになって(荷って)いた僧だったので、「名を荷う」という意味で、その植物は「茗荷(みょうが)」と名付けられました。そんな故事から物忘れの話と結びついたもので、実際の物忘れとは無関係ということです。

これで安心。ミョウガをたっぷり使ったお料理を食べ、暑さを凌いで食欲不振を取り戻したいものです。

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

都道府県 収穫量 割合%
高知県 5,080t 93.4
奈良県 101t 1.9
秋田県 75t 1.4
群馬県 61t 1.1
長野県 31t 0.6
山形県 21t 0.4
福島県 17t 0.3
北海道 15t 0.3
鹿児島県 13t 0.2
兵庫県 6t 0.1
青森県 4t 0.1
埼玉県 3t 0.1
和歌山県 3t 0.1
栃木県 2t 0
富山県 2t 0
宮城県 1t 0
神奈川県 1t 0
新潟県 1t 0
滋賀県 1t 0
大阪府 1t 0
広島県 1t 0
福岡県 1t 0
大分県 1t 0
  出展:地域の入れ物

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