食のこばなし

ミソ

NO.112

中国から始まった味噌の歴史

味噌の起源は、醤(日本で「ひしお」、中国で「じゃん」)と呼ばれるものでした。これは、動物や魚の肉をすりつぶし、塩と酒を混ぜ込んで壺に漬け込み、半年近くも醸成させて作ったものでした。食べ物の調味料として今のしょう油のようにふりかけて食べたようです。

紀元前700年ころには、中国に醤を専門に醸造する役職があったという事ですから、本格的な調味料として存在感を出していたのでしょう。醤はその後徐々に改良されて進歩し、大豆や雑穀を発酵させて作られるようになり、現代の味噌へと近づいていったのです。やがて高級役人の給料にも米と味噌が支給されるようになったのですから、やはり味噌は中国でも食文化の原点だったのです。

 

平安時代から伝わる日本の味噌の歴史

日本で味噌の古い起源をたどっていくと、平安時代の貴族の食卓に味噌汁としてのぼったとの記録があります。最初、味噌は粒々のある粒味噌だったそうですが、すり鉢が中国からわたってきてからは、この粒味噌をすりつぶして水に溶かすようになり、やがて味噌汁へと発展していきました。味噌汁こそ日本の味噌の歴史の始まりと言ってもいいほど、食文化の根底にあります。「一汁一菜」とはこの時代に生まれた食文化の言葉であり、「一汁」は味噌汁を指しています。

戦国時代、味噌は戦場に出陣する兵士たちの軍用食糧に欠かせないものでした。味噌を乾燥させたり焼いて味噌玉にして携行したり、干し大根や干した葉っぱを味噌で煮詰めてさらに干し固めて携行し、戦場ではこれに水を入れて煮て、即席味噌汁を作ったようです。そのため、武田信玄や伊達政宗は、戦いに備えて農民に大豆の増産と味噌作りを奨励したとのことです。

平安時代には、ご飯に味噌汁をかけて食べる「汁かけご飯」が普及していたようです。味噌はその後、ユズを入れたり、カニ味噌になったり鉄火味噌になるなど日本人の創意工夫が発揮されて今日のように味噌の大発展時代を迎えるのです。

江戸時代、味噌は庶民の食生活に浸透して江戸の生産だけでは間に合わなくなり、三河や仙台から海路で運ばれて売られていました。味噌汁には季節の野菜を入れるので、江戸の街では味噌の普及とともに、野菜売りも大変盛んになったということです。

 

がんの予防効果という学説

1980年代に国立がんセンターの疫学部長だった平山雄博士は、日本人の食生活を10年以上調べた成果を次々と発表しました。そのとき、味噌汁を食べる人ほど胃がんで死亡する率が低くなるという結果を発表して大きな反響を呼びました。

筆者は平山博士からこのころ何度も話を聞いたのですが、味噌汁に含まれるイソフラボン、不飽和脂肪酸などに、発がんと密接な関係にある変異原性物質を抑制する働きがあるということでした。

大豆に含まれている成分の中に腫瘍を抑えるものがあり、味噌汁を毎日食べているとがんになりにくいという学説が確立されたのです。

また味噌汁は、いろいろな野菜を具として入れるので、ビタミンと繊維質を多く摂取することになり、これもまたがん予防に役立つのです。

味噌には体内の酸化を予防する成分も含まれているので、老化防止にも役立っています。そのほか消化促進作用、毒素の分解作用などからタバコの害の防止などにも効果があると言われています。

 

塩分は薄味で控えめに

ただし、要注意事項もありました。味噌汁をたくさん食べると塩分の取り過ぎになるというので、嫌っている人もいます。しかし薄味にすれば、塩分を抑えることもできるので、神経質になる必要はないでしょう。味噌汁は、薄味に慣れてしまうと濃い味噌汁は食べられなくなってしまいます。薄味は食の習慣で実現できるのです。ただし、薄味だからとたくさん食べると総量で塩分を多量にとるのと同じですから、適量を食べることが大事なようです。

仙台にある筆者の親戚の家は、味噌・しょう油の醸造元をしている大きな屋敷を構えた旧家でした。辺り全体が醤油の匂いがする環境で、筆者は少年時代、この家で育ったことがあり、今でも味噌の醸造を思い出します。しかし2011年3月11日の東日本大震災で津波の被害にあい、すべて失って醸造の歴史を閉じました。

味噌を使ったことわざや言葉も多数あります。手前味噌、味噌をつけるなどから始まって、味噌っかす、味噌っ歯、「そこがミソなんだよ」などのように肝心な個所や一番大事な個所を指すときにも使います。

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

都道府県 出荷量 出荷額 割合
長野県 217,762t 732.0億円 50.9
群馬県 52,782t 148.2億円 10.3
愛知県 45,990t 102.1億円 7.1
広島県 19,347t 54.3億円 3.8
大分県 16,215t 36.3億円 2.5
北海道 21,108t 31.6億円 2.2
福岡県 7,537t 28.8億円 2
京都府 7,402t 24.9億円 1.7
富山県 10,083t 21.6億円 1.5
福島県 11,402t 18.9億円 1.3
徳島県 6,243t 18.5億円 1.3
新潟県 4,697t 17.2億円 1.2
宮城県 4,420t 16.6億円 1.2
愛媛県 5,364t 15.2億円 1.1
三重県 5,726t 13.6億円 0.9
青森県 5,022t 13.4億円 0.9
熊本県 14,557t 12.9億円 0.9
千葉県 4,762t 11.2億円 0.8
鹿児島県 3,148t 9.3億円 0.6
山形県 2,828t 8.9億円 0.6
岡山県 2,814t 8.8億円 0.6
秋田県 2,735t 8.7億円 0.6
長崎県 3,447t 8.4億円 0.6
兵庫県 3,039t 7.1億円 0.5
山口県 2,565t 6.4億円 0.4
栃木県 1,502t 6.3億円 0.4
神奈川県 1,530t 5.2億円 0.4
埼玉県 1,399t 4.9億円 0.3
佐賀県 1,352t 4.7億円 0.3
宮崎県 1,677t 4.5億円 0.3
島根県 1,220t 4.4億円 0.3
石川県 4,685t 4.1億円 0.3
岐阜県 1,365t 4.1億円 0.3
茨城県 1,167t 3.8億円 0.3
香川県 824t 3.2億円 0.2
静岡県 845t 3.2億円 0.2
大阪府 756t 3.0億円 0.2
福井県 607t 2.8億円 0.2
岩手県 6,302t 1.8億円 0.1
和歌山県 603t 1.8億円 0.1
高知県 514t 1.1億円 0.1
鳥取県 253t 0.8億円 0.1
出典:地域の入れ物

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