タコ
NO.35
タコは「頭」が美味しい!
北海道の札幌市近郊の石狩浜に遊びに行ったとき 、土地の漁師が漁獲したばかりのタコを大きな釜で茄でて即売していました。頭と足を適当に切って販売するのですが、なぜか足の売り場と頭の売り場と2か所あるのです。
2か所の売り場に並んでいる人の姿が違う。頭売り場の列は明らかに地元の人たち。足の方は、よそからきた人たち。一見して分かります。そこで、売り場の近くにいた漁師と思われる人に聞いてみました。すると「タコは頭がうまい。街の人は足を好むがタコは頭だね」と言います。それですぐに頭の方に並んで買いました。
頭の表層の皮をそいで適当に切りそろえ、足を食べるのと同じようにワサビ醤油で食べるのですが 、これが何ともおいしい。後日、札幌のスナックに行ったとき、突き出しをつまんで「お、タコの頭」言ったら「よく分かったねえ」と褒められたものです。
頭と言っているのは実は胴体であり、本当の頭は足と胴体の問にあるのです 。目玉があるあたりがタコの頭ということです 。頭を真ん中にして胴体と足が付いているという変わった構造をしていて、同じ構造をしているイカの仲間であり、頭足類と呼ばれています 。
タコを食べると 、噛みしめるほどにうまみがジワリと出てくるのでうまさを堪能できます 。特にタコの頭にはうまみが凝縮されているように感じます 。このようにうまみがあるのは 、タコはカニ、エビ 、アワビなども食べている海のグルメだそうで 、そのエサのうまみを集約しているからだと漁師が解説してくれました 。タコはアミノ酸の一種であるタウリンを豊富に含み 、ミネラル分やたんばく質も豊富にあるので栄養分に富んだ海の幸なのです 。
平安時代にも食用にしていた
日本では、平安時代からタコを食べていた記録が残っています 。江戸時代中期の「 和漢三才図絵」には 、タコはイモを好み 、田んぼに入ってイモを掘って食べるということが書いてあるということです 。江戸時代、タコを飼っていた人がいたのだろうか。
タコ類は 、マ ダコ 、ミズダコ 、イイダコ 、アシナガダコ 、アフリカダコ 、ヤナギダコなど種類が多く 、世界中の海に生息しています 。
足の長いアシナガダコを図鑑で見ると 、本当にどうしてこんなに長い足なのかと感心してしまいます 。
日本では 、本州以南に 生息するマダコ 、北の海に 生息するミズダコなどが主たるものです 。春先になると飯粒のような卵巣を一杯抱えているのイイダコは、お酒のお供に好まれています 。
海の悪魔?
私たちの食卓にあがってくるタコは、日本近海物は少なく、多くは外国の海で漁獲されたものです 。世界でタコを好んで食べるのは断然日本人が多くイタリア、スペイン 、メキシコ人なども食べています。しかし世界の多くの人々は、タコは海の悪魔だと言って忌み嫌っているようです 。
イタリア料理、スペイン料理にはタコを素材にした料理がありますが、どれもタコの素材をうまく生かしたおいしい料理になっています 。
日本では瀬戸内海で獲れるマダコがおいしいタコとされており兵庫県明石市の沿岸で獲れる明石タコはタコの中でも最良のものとして知られています 。江戸時代には粕漬けにされたタコが徳川将軍家に献上されていたということです 。
タコは相当な知恵モノ
タコは無脊椎動物の中でも知能の高い動物として知られいます。インドネシア近海に生息するタコは、人間が捨てたココナツの殻を組み合わせて、身を守る防御具に使っていたという学術研究もあります 。
色を見分けたり形を認識したりすることもできるそうで、ふたの付いたガラス瓶の中に入っているエサがあると 、ふたをひねって開けてエサを取り出すこともできるということですから相当な知恵モノです 。
ただしタコの中にはフグの毒と同じテトロドトキシンという猛毒を持つヒョウモンダコがおり 、これに噛まれると死亡することもあるということです。
「タコ部屋」ってどんなことを言うの
ところで「タコ部屋」と言って一度入ったら出られない劣悪な職場環境などに使われている有難くない名前があります 。この語源は 、タコ壺のように 一度入ると出られないことのたとえだとか 、タコのように 最後には自分の足を食べないと生きていけない劣悪な環境だという説があるようです 。いずれにしても有難くない名前です。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
たこの食品成分
出典:食品成分データベース
カテゴリ