食のこばなし

タケノコ

NO.25

10日間で急成長するモウソウチク

子どものころ、友だちの家に行ったとき、台所脇の朽ちかけた床板を突き抜けてタケノコが顔を出しているのを見てびっくりしたことかあります。シーズンになって皮つきのタケノコを店頭で見かけると、そのときの光景をありありと思い出すことがあります。タケノコの生命力を見せられたことが、子ども心の中に強い印象となって残っているのでしよう。

仙台の叔母の家が筆者の田舎ですが、その屋敷の裏にうっそうとしたモウソウチク(孟宗竹)の竹やぶがありました。昼なお暗い竹やぶは、子どもには怖くて足を踏み入れられませんでしたが、春になると従兄弟に連れられてタケノコ採りに入り、落ち葉をかきわけて顔を出しているタケノコを見つけて掘り出しました。

タケノコの表面にある一番硬い皮は、おにぎりや食べ物を包む食器・包装材として利用されました。いまでもタケノコの皮をデザインした包装材があるのはその名残です。モウソウチクは地面に顔を出してから10日間ほど猛烈な勢いで成長し、その後はほとんど成長が止まると言われています。夏ごろには背の高い堂々とした竹に成長し、七夕様の竹飾りとなって利用されたものでした。あの子どものころに見た竹やぶは、先の東日本大震災の津波に飲み込まれ、跡形もなく消えてしまったのは本当に残念です。

 

採り立てが一番はタケノコとトウミギ

田舎の人たちはよく「タケノコとトウミギは採りたてでないと美味しくない」と語っているのを覚えています。トウミギとはトウモロコシのことであり、この二つは収穫したらすぐに食べるということです。とくにトウモロコシは、釜のお湯が煮たったら畑にトウモロコシを採りにいくと教えていました。採ったら皮をむいてすぐに茹でるという教えでした。

採りたてのタケノコ料理は、何と言っても味噌汁が最高です。タケノコのかぐわしい匂いがみそ汁の味噌の香りとよく合っており、サクサクした軟らかいタケノコの歯触りは、春の訪れを告げる食感です。かつお節をまぶしたタケノコの煮つけも筆者の好物です。やや太めの硬いタケノコで、すこしえぐい感じの方がおいしさが伝わってきます。

タケノコの皮に梅干を挟んでしゃぶるのが当時の子どもたちの楽しみでもありました。しゃぶって軟らかくなったタケノコの皮から、何とも言えないタケノコの風味がにじみだし、それが梅干の味となじんでおいしかったのです。あっちでもこっちでも、子ともたちかタケノコの皮をしゃぶっていました。 いったいあれは、誰が発明したのでしようか。全国的な流行だったのでしょうか。是非知りたいと思っています。

タケノコの栄養成分は、豊富なたんばく質やピタミンB1、B3、ミネラルを含んでいて食物繊維も豊富です。不溶性の食物繊維はセルロースが多いので、整腸作用やコレステロールの吸着作用もあるのです。骨の成分であるリンも含まれているし、体内のナトリウムを排泄するカリウムも多いようです。

あやかりたい「竹の子の親まさり」

モウソウチクが原産地の中国から日本に渡ってきたのは江戸中期と言われています。琉球を経て薩摩の島津家の別邸の庭園に移植され、それが日本全土に広がっていきました。タケノコも中国で食べていた慣習を移入したものでした。筆者が札幌市に住んでいたころ食べた北海道のタケノコは、ネマガリダケの若芽であり、太目の鉛筆程のきやしゃなタケノコでした。春の雪解けを待ちかねてよく山菜とりに山に入りましたが、ネマガリダケのササやぶはどこにでもありました。採れたてを焼いてオリーブオイルと塩を付けたりマヨネーズで食べましたが、野趣あふれるタケノコ料理でした。

また中国に行ったときに初めて知りましたが、お酒のつまみやラーメンに必ず入っているメンマは、中国語で乾筍と書き、タケノコを乳酸発酵させた漬物だと聞いてびっくりしました。そういえばシナチク(支那竹)ともいいました。

タケノコは、漢字で「筍」と書きます。竹かんむりの下に旬(しゅん)と書いた字です。旬は、10日間という意味です。日本では旬を一番いい時期という意味にも使っています。ことわざや比喩によく出ることでもタケノコは親しみを持たせます。雨後のタケノコと言えば、雨が降った後はタケノコが生えやすいことから、何かをきっかけとして物事が次々とでてくることをいいます。タケノコ生活とは、タケノコの皮を1枚ずつはぐように、衣類・家財などの持ち物を少しずつ売って食いつないでいく生活を言います。

あまり知られていないのがタケノコ医者。ヤブ医者とはよく聞きますが、タケノコ医者とは、技術が未熟でヤブ医者にもならない医者のことを言うそうです。一方で、竹の子の親まさりとは、親よりも子の方が優れているたとえです。親にしても子にしても、あやかりたい言葉です。

 

文:ばばれんせい  絵:とよだゆき

 

たけのこの食品成分

出典:食品成分データベース

たけのこの生産量の都道府県ランキング(令和元年)

順位 都道府県 生産量 割合
1 福岡県 5,652.8t 25.40%
2 鹿児島県 4,829.6t 21.70%
3位 熊本県 2,863.2t 12.80%
4位 京都府 2,510.8t 11.30%
5位 香川県 974.6t 4.40%
6位 宮崎県 861.9t 3.90%
7位 静岡県 573.6t 2.60%
8位 徳島県 516.7t 2.30%
9位 大分県 340.0t 1.50%
10位 石川県 335.1t 1.50%
11位 高知県 323.4t 1.50%
12位 千葉県 310.9t 1.40%
13位 愛媛県 232.7t 1.00%
14位 三重県 210.6t 0.90%
15位 山形県 193.7t 0.90%
16位 兵庫県 184.1t 0.80%
17位 岡山県 178.3t 0.80%
18位 栃木県 156.0t 0.70%
19位 山口県 132.4t 0.60%
20位 宮城県 101.8t 0.50%
21位 福井県 101.4t 0.50%
22位 茨城県 101.3t 0.50%
23位 和歌山県 82.7t 0.40%
24位 島根県 74.0t 0.30%
25位 佐賀県 71.3t 0.30%
26位 鳥取県 46.1t 0.20%
27位 岐阜県 44.9t 0.20%
28位 大阪府 39.2t 0.20%
29位 新潟県 33.1t 0.10%
30位 愛知県 32.3t 0.10%
31位 群馬県 31.9t 0.10%
32位 富山県 31.6t 0.10%
33位 神奈川県 24.9t 0.10%
34位 福島県 18.0t 0.10%
35位 山梨県 17.9t 0.10%
36位 長野県 13.9t 0.10%
37位 埼玉県 11.5t 0.10%
38位 長崎県 10.7t 0.00%
39位 広島県 6.4t 0.00%
40位 奈良県 3.9t 0.00%
41位 秋田県 3.4t 0.00%
42位 岩手県 1.1t 0.00%
42位 沖縄県 1.1t 0.00%
44位 青森県 0.1t 0.00%
北海道
東京都
滋賀県

出典:地域の入れ物