食のこばなし

カニ

NO.111

日本の代表は毛ガニ、タラバガニ、ズワイガニ

世界中の海には約5000種ものカニが生息しています。そのうち日本近海には約1000種も生息しているそうです。日本で食卓に上る代表的なのは、毛ガニ、タラバガニ、ハナサキガニ、ズワイガニ、ワタリガニなどです。

ある夏の午後、釧路の漁港で手に入れたハナサキガニと海岸の松林の下で格闘していました。なんとなく不穏な空気を感じて周りを見渡すと、木の枝にぎっしりとカラスが止まってこちらを凝視していました。そのときの驚きは半端ではありませんでした。カラスに襲われるではないか。彼らは、食べ終わって殻を捨てるのを静かに待っていたのです。

日本を代表する毛ガニは、卵が孵化するまで1年かかり、14回の脱皮をくり返し、7年目で漁獲対象となる甲長8センチに達します。カニは脱皮時に大変なエネルギーを使います。脱皮直後のカニは、外側は大きくても中身は瘦せています。

また水揚げされてから、販売までに生簀に長期間いるカニも身が細ってしまいます。カニはプランクトンの発生が多い、餌の豊富な海で取れたものが、身入りもミソもたくさん入って美味しいのです。

甲羅の裏にある濃厚なコクのある味のカニ味噌は、中腸腺または肝膵臓で、内臓にあたる部分です。カニ味噌にはグリコーゲンが豊富に含まれており、脂肪をエネルギーに変え、体に脂肪をたまりにくくする働きがあります。毛ガニのカニ味噌に含まれるイノシン酸は老化防止に効果があります。

タラバガニはヤドカリの類です。タラの漁場が生息域なのでこの名がついていて、はさみと脚を合わせて四対しか在りません。実は5脚あるのですが、5脚目は小さく鰓室に差し込まれていて、鰓の掃除をする役割を果たしています。タラバガニは長命でオスもメスも30年以上生きています。またカニは横方向に移動するのが一般的ですが、タラバガニは縦方向に移動できるおかしなヤツです。

 

カニの赤い色素はアスタキサンチン

カニを茹でると赤くなるのは、甲羅の中のタンパク質と結びついているアスタキサンチンという色素が、加熱によりタンパク質と分離するからです。現在は、タラバガニは9割以上がロシアで捕獲され輸入されたものです。

ズワイガニは、関東地方では「越前ガニ」、関西地方では「松葉ガニ」と呼ばれています。ズワイという名称については脚の長さに比べ頭胸部が小さいことから「頭矮」が語源という説があります。

カニを食べた思い出はたくさんありますが、中でもアメリカの西海岸で食べたカニは忘れられません。

海辺のひなびた木造のレストランに入ると、無骨なテーブルに新聞紙が広げられ、木槌が置かれました。レストランの名前は「クラブハウス」。文字通り「カニの家」です。ほどなく大きなトレーの上に湯気の立ったカニが載せられてテーブルに運ばれてきました。

固い甲羅を思いっきり木槌でたたき割って中の身を食べる。あっちでもこっちでも、どんどんたたく音が心地よく聞こえてきます。調味料は岩塩だけ。これを適当にまぶしてひたすらカニと格闘です。とにかく、おいしかった。食べ終わると甲羅の残骸をテーブルクロスに使っていた新聞紙に丸めてゴミ箱へ。なるほどと感心したものです。

シアトルに行ったときは海岸のフィッシャーマンズ・マーケットに出かけました。漁船が停泊している港です。いま獲れたばかりの魚介類を船の上で売ってくれます。そこで買ったのは「ダンジネス」という大きなカニ。これを1個食べただけでお腹がいっぱい。これまたおいしいカニです。

 

カニの殻は様々な分野で活用

カニの殻からは、食用以外にもキチン、キトサン、グルコサミンなどが製造されます。甲殻類の外骨格から得られる動物性の食物繊維であるキチンを、濃いアルカリ中での煮沸処理等により脱アチセル化してキトサンを得ます。

キトサンはバイオマス(生物資源)と言われ、加工が容易であり、資源枯渇の可能性が低い、化学処理により様々な機能が付けられる、無害、安全性が高いという特徴があります。医療分野、繊維、化粧品、健康食品などに利用されています。

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

都道府県 漁獲量
北海道 6,274t 27.6
鳥取県 2,724t 12
島根県 2,616t 11.5
兵庫県 2,324t 10.2
新潟県 2,048t 9
石川県 1,873t 8.2
秋田県 858t 3.8
東京都 546t 2.4
福井県 523t 2.3
愛知県 479t 2.1
山形県 471t 2.1
宮城県 418t 1.8
青森県 349t 1.5
富山県 324t 1.4
福岡県 147t 0.6
長崎県 114t 0.5
岩手県 92t 0.4
熊本県 91t 0.4
愛媛県 84t 0.4
京都府 55t 0.2
福島県 47t 0.2
大分県 38t 0.2
三重県 33t 0.1
山口県 29t 0.1
静岡県 26t 0.1
岡山県 24t 0.1
香川県 21t 0.1
千葉県 19t 0.1
広島県 12t 0.1
出典:地域の入れ物

 

 

 

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