食のこばなし

エダマメ

NO.8

平安時代から続いている日本の食文化

ビールのおつまみの定番・枝豆は、日本人が発明し世界へ発信した食の文化です。その起源をたどっていくと平安時代からすでに食べられていたそうで、江戸時代には枝豆売りが街頭に出ていたということです。

枝豆は大豆の若い時代、つまり完熟前の大豆です。茶色の大豆と緑の枝豆は見た目が違うのですが、正体は同じだったのです。大豆は5月下旬ごろにタネを植えると、芽が出てから2か月ほどで白い花が咲きます。それからほどなくサヤがついて大きくなりますが、植えてから3か月くらいの緑のサヤを収穫して枝豆として出荷されます。世界で枝豆を食べているのは、日本のほかに中国、台湾、タイ、ベトナムなどアジアの諸国・地域です。日本発の食文化が広がっていったのです。

枝豆の旬は7月下旬からです。採れたてを塩茹でして、あの独特の香りを放つ枝豆を楽しむのは、日本の夏の風物詩でもありました。最近は冷凍物が四季を通じて出ていますが、やはり夏の採れたてが最高です。

枝豆には夏バテを予防する物質が含まれています。ビタミンAやCは大豆よりも多く含まれていますしカルシウム、鉄分も豊富です。メチオニンというアルコールの分解を促して肝機能の働きをサポートする栄養素も含まれています。塩分の排出を助けて利尿作用を促進すると言われるカリウムも含んでいます。

 

ずんだモチとだだちゃ豆

枝豆は筆者の大好物ですが、その枝豆を材料にした仙台地方の「ずんだモチ」は最高です。いまでも仙台に行くと必ず買って帰ります。ずんだは「豆打(ずだ)」がなまった言葉というのが有力です。ずんだの作り方は簡単です。枝豆をすりつぶして砂糖と程よい塩で味付けをするだけですが、実は隠し味があります。仙台の田舎で食べたずんだモチの味は、売っているずんだモチとは微妙に違う。そこで仙台にいるいとこに聞いてみたらやっぱり隠し味があったのです。出来上がりのときに、ほんのちょっとだけ醤油をたらすと味が濃密になるという。自分でもずんだを作ったときにやってみたら、子どものころに食べていたあのずんだモチになりました。

七年に一度の大祭「御柱祭」で有名な長野県諏訪地方にもずんだモチに似た「のたモチ」があります。枝豆をつぶつぶが残る程度にすり、砂糖と塩で味をととのえるということです。これを米を半分つぶした半殺しのご飯の上に「ぬったくる」ようにするので「のた」となったのではないでしょうか。

山形県鶴岡市のJA鶴岡が販売している「だだちゃ豆」は、鶴岡の風土でしか育たない枝豆として有名です。初めて食べた時はびっくりしました。ほんのりと甘く、トウモロコシの香りを放つ独特の風味をもった枝豆です。鶴岡地方でしか育たたないという枝豆で、江戸時代からその地方の農家が代々大事に育ててきました。収穫時期は8月の旧盆から9月上旬までのごく短期間だけの希少価値なので、市場での値段も高いのです。

だだちゃとは、山形県庄内地方の方言で「おやじ」とか「お父さん」という意味です。その昔、土地の殿様が大の枝豆好きであり、領地の農家から毎日枝豆を取り寄せては食べていました。そのとき「今日の豆は、どこのだだちゃの豆か?」ときくので、いつしかだだちゃ豆となったということです。

冷凍枝豆をめぐってし烈な特許紛争が起きたこともあります。日本水産(ニッスイ)が1993年に出願した「豆の薄皮に塩味が感じられ、かつ豆の中心まで薄塩味が浸透している緑色が維持されたソフト感のある塩味茹枝豆の冷凍品」というのが発明の特許名称です。

 

枝豆特許戦争に発展

これにはニッスイのライバルにある冷凍食品企業がこぞって異議申し立てをしました。つまりこれはどのメーカーでも作っている冷凍枝豆だから、特許にはならないとする申し立てです。しかし特許庁は2001年6月に、すべての異議申し立てをしりぞけて特許を認める審決をだしたのです。その直後からニッスイは、冷凍枝豆を市場に出している41社に対して特許使用料を支払うように通知を出し始めました。

そこでライバル企業は、この特許は無効(つまり特許にあたらない)とする審判を申し立てます。これに対抗してニッスイは、売り出している冷凍枝豆メーカー全社に特許を侵害していると裁判所に訴えたのです。「枝豆特許戦争」という有名なトラブルに発展しました。この紛争は、ニッスイの特許は無効であるという最終審決となって一件落着しましたが、食品業界に知的財産の意識を持ち込んだ事件として大きな話題となったのでした。

枝豆は品種が多くざっと400種類と言われています。サヤに白い産毛があるものと茶色い産毛があるものがあり、どちらかというと白い産毛の枝豆が好まれているそうです。ふっくらした緑色の濃い枝豆でこの夏も乗り切りたいと思います。

 

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

エダマメ100グラム当たりの栄養素

食品100g当たり 茹で 冷凍
エネルギー (㎉) 135 134 159
水分 (g) 71.7 72.1 67.1
たんぱく質 (g) 11.7 11.5 13
脂質 (g) 6.2 6.1 7.6
炭水化物 (g) 8.8 8.9 10.6
無機質(ナトリウム) (㎎) 1 2 5
無機質(カリウム) (㎎) 590 490 650
無機質(カルシウム) (㎎) 58 76 76
無機質(マグネシウム) (㎎) 62 72 76
無機質(リン) (㎎) 170 170 190
ビタミンA(レチノール) (㎍) 0 0 0
ビタミンA(カロテン) (㎍) 260 290 180
ビタミンA(レチノール活性当量) (㎍) 22 24 15
ビタミンE α (㎎) 0.8 0.6 1.2
ビタミンE β (㎎) 0.1 0.1 0.2
ビタミンE γ (㎎) 6.5 5.8 8.2
ビタミンE δ (㎎) 2.5 2.1 3.8
ビタミンK (㎍) 30 33 28
ビタミンB1 (㎎) 0.31 0.24 0.28
ビタミンB2 (㎎) 0.15 0.13 0.13
ビタミンC (㎎) 27 15 27
食物繊維 (g) 5 4.6 7.3

出典:文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

 

エダマメの生産量都道府県ランキング(2017年)

順位 都道府県 収穫量
1 北海道 7,560
2 群馬県 6,550
3 千葉県 6,090
4 埼玉県 5,840
5 山形県 5,820
6 新潟県 4,900
7 秋田県 4,520
8 神奈川県 2,550
9 兵庫県 1,650
10 岐阜県 1,590
11 大阪府 1,270
12 青森県 1,170
13 徳島県 1,140
14 宮城県 1,120
15 福島県 1,020
16 岩手県 737
17 愛媛県 368
18 香川県 186
19 富山県 140
  茨城県
  栃木県
  東京都
  石川県
  福井県
  山梨県
  長野県
  静岡県
  愛知県
  三重県
  滋賀県
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  大分県
  宮崎県
  鹿児島県
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出典:地域の入れ物 https://region-case.com/rank-h29-product-edamame/