アスパラ
NO.28
不健康なアスパラ
その昔、東京から札幌に転勤になったときでした。北海道で採れたグリーンアスパラを八百屋さんで見て、びっくりしました。その当時、 アスパラと言えばあの白いふにゃふにゃした缶詰のアスパラしか知りませんでした。
このアスパラは、芽が出る前に土盛りをして光をあてないようにして栽培したものです。モヤシの栽培と似たようなものでしょう。筆者は白いアスパラは苦手で、おいしいと思ったことがありませんでした。だいたい、白くて薄気味が悪い。 アメリカ人の友人が 「不健康( ill health) だから嫌いだ」と言ったのには同感でした。
そんなふうに考えていたときに青いアスパラを見たときは、本当に新鮮でした。八百屋さんで調理法を聞いて早速購入しました。言われたとおり、5センチほどに切りそろえてバターでいため、塩とコショウをパラパラ、最後に醤油をさっと一振り、これだけですが、歯応えもあっておいしい。春先のデパートに行くと、航空便で本州へ送ることができましたが、料金が高くて手が出せませんでした。
春を告げる野菜
当時はいまのような宅急便はなく、北海道名産のメロンやグリーンアスパラやカニなどを東京方面に届けるのは、もつばら航空便でした。道産子は、東京方面のことを 「内地」と呼んでいました。北海道は外地だったのです。
雄大な自然と厳しい冬を背景にした独特の文化は、異国情緒があふれていました。外国から移植されたグリーンアスパラにふさわしい土地だったのです。
フランスでもアスパラは春を告げる野菜であり「春の宝石」と呼ばれているそうです。ベルギーでは 「貴婦人」と呼ばれ、アスパラ専用の食器や道具まであるということですから特別扱いの野菜なのです。
アスパラは、タマネギ、ニンニク、ネギなどと同じユリ科の多年草で、原産地は南ヨーロッパからウクライナ地方と言われています。紀元前7~6六世紀のギリシャ時代から栽培されていたと言われており、当時は医薬品として応用されたようです。食用になったのはローマ時代からです。
日本のアスパラガス発祥の地
日本へアスパラがわたってきたのは、江戸時代の文政年間、オランダ 船で長崎に伝えられました。しかし食用ではなく、もつばら観賞用として庭園に植えられていました。
そのころアスパラは 「オランダウド」とか 「オランダキジカクシ」などと呼ばれたということです。
明治四年 (1871) に北海道開拓使の開拓次官の黒田清輝がアメリカから新種を持ち帰って栽培を始めました。次いで明治6年には、ウィーンの万国博覧会を見学した津田仙がアスパラを持ち帰りました。 しかし本格的に栽培を手がけたのは北海道岩内町出身の農学博士、下田喜久三でした。
寒冷地の北海道でも栽培ができるのではないかと考えた下田は、1916年ころから北海道の富士山と呼ばれている羊蹄山のふもとの火山灰の土地でアスパラの品種改良を行い、1922年には共和町に40ヘクタールの大規模なアスパラ畑を作りました。 そして2年後には岩内町に日本アスパラガス株式会社を設立して缶詰生産を始めました。
このように栽培から加工して缶詰にする一貫した生産工程は、日本人のもっとも得意とするものであり、たちまち高品質が認められて輸出するまでになったのです。岩内町に行くと日本のアス。ハラガスの発祥の地として立派な石造りの記念碑が建立されています。
アスパラは栄養豊富な野菜として知られています。 アミノ酸の一種であるアスパラギン酸やアス。ハラギンが豊富であり、新陳代謝を高めて疲労回復に効果があります。アスパラの穂先に含まれているルチンは、高血圧を予防します。カロチン、ビタミンB1,B2,Eも豊富です。
またアスパラに含まれている苦味成分のアルカロイドは、春の山菜にはよく含まれているもので細胞の活性化に効果があるものです。ただ野菜には珍しい酸性食品なので、肉料理と一緒に大量に食べないようにしたいものです。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
アスパラの食品成分
順位 | 都道府県 | 収穫量 | 割合 |
1位 | 北海道 | 3,640t | 13.70% |
2位 | 佐賀県 | 2,580t | 9.70% |
3位 | 長野県 | 2,500t | 9.40% |
4位 | 熊本県 | 1,950t | 7.40% |
5位 | 福岡県 | 1,790t | 6.80% |
6位 | 長崎県 | 1,750t | 6.60% |
7位 | 栃木県 | 1,680t | 6.30% |
8位 | 山形県 | 1,620t | 6.10% |
9位 | 福島県 | 1,430t | 5.40% |
10位 | 秋田県 | 1,350t | 5.10% |
11位 | 香川県 | 817t | 3.10% |
12位 | 広島県 | 741t | 2.80% |
13位 | 青森県 | 635t | 2.40% |
14位 | 新潟県 | 595t | 2.20% |
15位 | 愛媛県 | 550t | 2.10% |
16位 | 岩手県 | 517t | 2.00% |
17位 | 岡山県 | 311t | 1.20% |
18位 | 島根県 | 134t | 0.50% |
19位 | 大分県 | 128t | 0.50% |
出典:地域の入れ物
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