Blog食育交歓

21世紀構想研究会・第4回食育シンポジウム報告4

テーマ:減塩献立に取り組む学校給食現場 報告4

~その課題と普及・啓発の展開を探る~

武方美由紀(愛媛県西条市立西条小学校 栄養教諭)

香川明夫  続きまして減塩をどのように取り組んでいるか。学校給食現場からの報告その2を愛媛県西条市立西条小学校栄養教諭の武方美由紀先生から報告していただきます。

 

愛媛県西条市立西条小学校の武方美由紀です。西条市は愛媛県の東部に位置し、県内有数の生産量を誇る複合農業地域です。第3次西条市食育推進計画では、西条市の豊かな恵みに感謝し、地元で採れる、新鮮で、安全、安心な食材を生かしてみんなで楽しく食べることにより、生涯にわたって健康な心身と豊かな人間性を育むという基本理念の基、各関係機関が連携して食育を推進しています。減塩につきましては、生活習慣病の予防や改善のための適切な食事、運動等を継続的に実践している人の割合の増加という項目にあたります。
その取組みの一つとして平成29年度に減塩レシピ集パート2、学校給食編の作成に協力しました。

春のページを紹介します。献立はごはん、メンチカツ、菜の花のからし和え、春キャベツの味噌汁です。1食分でエネルギーが603キロカロリー、タンパク質19.4グラム、脂質19.5グラム、塩分1.7グラムです。減塩のこつとして、醤油、ソースはかけるよりつけるとか、外食では丼ものは塩分が高くなりがちなので、なるべく定食を選びましょう。また、減塩ポイントとして、春キャベツの味噌汁では牛乳を使うことによって旨味が増し、コクのある減塩味噌汁になりますというようなことが書かれています。

 

 

減塩ポイントを簡単に紹介します。たけのこのつくね揚げでは、揚げることでコクと香ばしさが加わり、減塩の物足りなさを補います。鶏肉と夏野菜のハニーマスタードあえでは、マスタードは辛み、旨味、酸味のバランスが良く、味に深みが出て、減塩につながります。ぎせい豆腐のあんかけでは、表面をこんがり焼いて風味を豊かにし、片栗粉のとろみのあんで味を絡めて減塩になります。

 

おかか和えでは、かつお節を入れて、旨味を加え減塩にします。ファイバースープでは、トマトケチャップを加えることで、トマトの旨味であるグルタミン酸が出て、調味料が少なくてもおいしく食べることができます。他にはだしをしっかり取って、薄味でもだしの旨味や香りで満足できる味わいにしましょうとか、新鮮な食材を使うことによって素材そのものの味を生かしましょうなどを掲げています。

 

塩分の数値には表れませんが、果物に含まれる水溶性食物繊維が塩分の排泄を促してくれることや、じゃがいもには過剰に摂取したナトリウムを排泄するカリウムが多く含まれています。味噌から摂取する塩分は血圧の上昇を抑えることができ、塩より減塩になるといったことを紹介しています。

月平均で1.9グラムを目指して、献立そのものや料理の組み合わせ等を改善していくことにしました。まず、食塩相当量の基準が2.5グラム未満であった頃の献立です。白ごはんにおかずの組み合わせなら、1.9グラムはわりと簡単にクリアできます。しかし、炊き込みごはんや混ぜごはんの献立、パンの献立のときは非常に難しいです。西条市では、麺類だけで主食メニューにはできませんので、減量したパンと麺類を組み合わせて提供しています。

 

次のような改善をしました。下のスライドの1と2は、市内統一で改善した点です。週3回の米飯、2回のパン献立を基本にしています。祝日等で1週間の給食回数が減った場合は、週3回の米飯献立を優先しました。また、うどんやラーメンのような汁のある麺類には、減塩パンではなく、白ごはんを組み合わせます。パスタ等の汁のない麺類には、減量した減塩パンを組み合わせることにしました。

3から5は本校での改善点です。本校は約560食の単独校です。喫食の様子や残菜を観察していると、フライ、バットにタレが多く残っていたり、別配りにしたタレも余して返したりするクラスがあります。そこで、タレをかけた状態で配膳する献立を、タレを別配りにし、なおかつ、タレの量を3割減らしました。肉や魚の煮込み料理も、調理過程で煮汁が多く残るという実態がありますので、焼き物にして塩分量を減らしました。また、タレをかける主菜の付け合わせは、和え物ではなくボイル野菜にしました。地元で採れる旬の野菜、そのものの味を味わいつつ、主菜にかけるタレが副菜にかかってもおいしい組み合わせにしています。

 

 

 

本校では夏休み明けの9月初旬に、5年生が米と麦を蒸して、麹をつくることから体験する味噌づくりをおこなっています。減塩味噌で仕込みから3カ月で熟成して食べることができます。

本校では早寝・早起き・朝味噌汁をスローガンに、全学年を対象に、夏休みの課題として味噌汁づくりを体験させています。さらに5年生は授業でつくった味噌を持ち帰り、冬休みにも味噌汁をつくります。
その事前指導として、ご飯と味噌汁だけでバランスの良い朝食をつくるということで、おかずになる味噌汁の実を考えさせています。ここでも具だくさんで減塩味噌汁を意識させています。

現在提供している減塩献立について、児童から味がないとか、薄いとかは言われていません。残菜が増えたりもしていないので、味にメリハリをつけたり、料理の組み合わせを工夫したりすることで、無理なく減塩していければと考えています。

報告5へつづく