あなたの誕生樹

あなたの誕生樹NO.120

モミ

7月29日

 

山本周五郎の小説「樅の木は残った」の主人公原田甲斐は、仙台藩のお家騒動にかこつけて取り潰しを企む幕府の謀略を防ぐべく、寛文11(1671)年3月27日に関係者とともども命を絶つというストーリーです。その後、原田甲斐の母親・慶月院は息子の行動を信じ絶食し、7月29日に亡くなったといいます。

家臣の対立抗争を背景にした伊達騒動は歌舞伎や浄瑠璃などに脚色され、原田甲斐は悪役に仕立てられることが多いのですが、甲斐の真意は母には伝わっていたのではないでしょうか。この母にしてこの子あり。

日本の各地に自生するモミはマツ科の常緑針葉樹の高木で、高いものは40メートルにも及び、威風堂々とした樹木です。山本周五郎の小説では、原田甲斐は「私はこの木が好きだ。この木は何も語らない。だから私はこの木が好きだ」とあります。

 

文:椋 周二