NO.32
フジ
5月2日
フジ（藤）の日本固有種は２種類あり、牧野富太郎博士は、伸びる方向に対して右巻きのフジを「フジ」または「ノダ（野田）フジ」と名付け、左巻きのものを「ヤマフジ」または「ノフジ」と名付けられたといいます。サクラ、ツバキと共に日本を代表する花木です。前者の方が房も長く、よく公園の藤棚に植えられていて、後者は山などでマツなどの高木に絡まって咲いています。ノダフジのノダは大阪市の野田のことで、古くから「吉野桜」や「高尾の紅葉」と並べられるほどの名所であったことから名前の一部になったといいます。
源氏物語には光源氏の初恋の人ということで“藤壺の宮”が出てきますが、宮中の奥深く庭に藤が植えられていたところにお住いの人という意味でしょう。
花は、長い総状花序を垂らしてしていて、白花もありますが、“藤色”と言うように淡い紫色が身上であり、香りも淡く品があります。
実は大きなエンドウ豆を薄くしたような形をしていますが、子孫を残すために遠くに実を飛ばそうとするのか、バッチという音を立ててすごい力ではじき飛ばすので注意をしたほうがいいです。
フジの花が咲くころ、麗らかな天気に誘われて、遠出をするのもまた気持ちがいいものです。
〇 くたびれて宿かる頃や藤の花 （芭蕉）
文：椋 周二