あなたの誕生樹

あなたの誕生樹NO.34

フジザクラ

5月4日

 

 

富士山麓一帯から箱根、伊豆半島に分布する野生種のフジザクラ(富士桜)は、別名、マメザクラと言われるように小ぶりの花を下向きにつける可愛らしいサクラですが、4月の下旬から5月にかけて花を咲かせます。そういえば昔、“富士桜”という名前の力士がいましたが、小ぶりのどちらかと言えば可愛らしい感じのお相撲さんでした。

『古事記』に出てくる「木花開耶姫」はサクラの化身のことと言われていますが、富士山を祀る浅間神社の祭神が木花開耶姫であることからして、この「木花咲耶姫」はフジザクラの化身ではないかという説があります。この姫は瓊瓊杵尊と結婚して三つ子を生むという伝説がありますが、サクラは一般的に一つの蕾から2,3個の花を咲かせますので、このことが伝説に反映されたのかなと想像しています。

1300を超える全国の浅間神社の総本山・富士浅間神社では、桓武天皇時代の大噴火が治まった5月の上旬に例祭が行われることから、5月4日の誕生樹にしました。

フジザクラをシンボルの花としているのは、富士山の麓の山梨県の他に富士吉田市、富士見市と御殿場市がフジザクラをその自治体の花にしています。また、静岡県・山梨県にまたがる富士山の山頂付近は神社有地なのですが、富士山はわが県のものという争いを避けるために、県境は未確定になっているのも面白いですね。

サクラは一般的に挿し木が難しいといわれているのですが、御殿場の渡辺健二氏はフジザクラの挿し木による繁殖に成功し、富士山周辺の植樹活動に尽力されているということです。

文:椋 周二