あなたの誕生樹

あなたの誕生樹NO.94

ネムノキ

7月3日

 

マメ科のネムノキは、夕方から葉を合わせるように閉じること(就眠運動)から“眠る木”と名付けられたと言われます。美智子上皇后が作詞された「ネムノキの子守歌」はこうしたことからの発想で作られたのだと思います。

松尾芭蕉は奥の細道の旅で訪れた山形県の象潟の地で雨に濡れるネムノキ(ねぶ)の花を「象潟や雨に西施(せいし)がねぶの花」と詠んでいます。ここに出てくる西施という人は、中国で呉に敗れた越の王が臥薪嘗胆(がしんしょうたん:将来の成功を期して苦労に耐えること)し、復讐を果たすのですが、一つの計略として絶世の美人・西施を呉王に献上し目的を果たしたことから「傾国の美人」と言われている女性です。妖艶なイメージの楊貴妃に比較して、病弱で華奢なイメージの西施を雨に煙るネムノキの花に喩えた発想力はさすが芭蕉だなと思います。

日本語の名前は“眠る木”ですが、中国語では“合歓の木”と表わします。合歓は“男女が共寝をすること、歓びを共にすること”で、夫婦円満を意味するとのことです。

初夏の6~8月頃、淡いピンク色の花で、暑い日差しを避けて夕方から翌日の昼頃まで咲いています。夜になると葉を閉じる一方、花は夜開くのですね。

花も葉も優しい感じで、この木を庭に植えると優しい気持ちになれる気がします。

 

文:椋 周二