NO.100
ナツツバキ
7月9日
森鴎外は意外にもガーデニングが趣味だったと言われています。文京区の自邸(今は鴎外記念館)・観潮楼には色々な花木を植えて楽しんで、「花暦」なる自筆の日記が展示されています。その中でも、ナツツバキをことのほか愛し、「褐色の根付川石に白き花はたと落ちたり、ありしとも青葉がくれに見えざりしさらの木の花」という歌を残しています。
ツバキ科のナツツバキは、味わいのある花です。幹はサルスベリに似ていて、葉はツバキ属らしからぬハナミズキに似た柔らかな葉で落葉性です。花は一重のサザンカに似ていて、一日花です。
1922年7月9日に他界した後、このナツツバキはすぐに枯れてしまったと娘さんの森茉莉は書いていました。
別名、サラノキ(沙羅樹)と呼ばれ、仏教三聖樹の一つ「沙羅樹」が日本ではこのナツツバキがあてられていました。仏典にいう「沙羅樹」とは別物ですが、確かに、釈迦入滅の時に花の色が白く変わったといわれている花に見まがわれたというのも頷けます。
文:椋 周二