あなたの誕生樹

あなたの誕生樹NO.31

タチバナ

5月1日

 

 

橘月(タチバナヅキ)は旧暦5月の異名です。『枕草子』には「五月のついたちのころ・・橘の・・花のいと白う咲きたる」とあり、また『古今和歌集』には「さつきまつ花たちばなの香をかげば昔の人の袖の香ぞする」(詠み人知らず)とあることから5月1日の誕生樹にしました。

京都御所の紫宸殿の前庭には“右近の橘 左近の桜”が植えられていて、古くからタチバナは重用されていた訳です。学名がCitrus(柑橘) tachibana(橘) とあることが示しているように、柑橘類唯一の日本の固有種でもあり、ヤマトタチバナとも呼ぶそうです。

常緑の葉の中での白い花は、なんとなく品の良さを感じさせますが、古くから家紋にも使われていたり、現在の文化勲章にもタチバナの花がデザインされています。

タチバナの白い花はすごくいい香りがして、現在も柑橘系化粧品が男性用であるように、昔から男性用の香水でもあるようです。そして花言葉は“追憶”とのことですが、『古今和歌集』のように女性から追憶されるようになるためにも香水を男性は使ったのでしょうか。ちなみに、女性用の香水は梅が代表で、紀貫之の「ひとはいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香のにほいける」は昔の恋人と梅の香りを重ねているのでしょうね。

文:椋 周二