あなたの誕生樹

あなたの誕生樹NO.5

アンズ

4月5日

バラ科のアンズ(杏)は中国原産で奈良時代に日本に渡来したと言われており、「唐桃(からもも)」ともよばれています。英語名は aplicot (アプリコット)であり、古くから中央アジヤ、ヨーロッパで栽培され、現在ではアメリカ・カルフォルニアが一大産地となっています。

アンズの種子には鎮咳、去痰などの薬効があり、中華料理のデザートによく出される杏仁豆腐はもともと乾燥した杏の種子(仁)から作られて豆腐に似ていることから杏仁豆腐と名付けられたのでしょうか。

昔、中国に董奉という名医がいて、貧しい患者から治療費代わりにアンズ(杏)の木を植えさせてアンズ林になったという故事から「杏林」は医者の尊称となったといわれます。杏林大学の名前の由来もこの故事によるとのことです。

また、300年前、宇和島藩豊姫が真田藩に輿入れの際、遠くに嫁いで故郷を懐かしむのではないかと家来がこのアンズの種を持参し、今の長野県千曲市更埴に植えたということです。更埴の「あんず祭り」は3月の下旬から4月の中旬にかけて開かれ、アンズの里はピンク色に包まれます。

こうした歴史もあり、信州・長野のアンズ生産量は青森県に次いで全国2位ということで、特に善光寺の鐘の音の聞こえる地域でとれるアンズの味は格別とか。そんな歴史的風景を芭蕉は「善光寺 鐘のうなりや 花一里」と詠んだのでしょうか。

文:椋 周二