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- 2024年 第19回大会
- 表彰式
19th contest第19回大会について
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深紅の大優勝旗は石川県立明和特別支援学校のペアが獲得
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優勝(藤江賞)石川県 石川県立明和特別支援学校
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- 学校栄養職員・岡春菜さん
- 調理員・岩岸美加恵さん
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準優勝(武蔵エンジニアリング賞)香川県 高松市立香南学校給食共同調理場
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- 栄養教諭・谷西真理子さん
- 調理員・森下貴子さん
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香川県代表は、地域の農畜産物を食べることが貴重な経験になるという考えから、地場産の食材を中心に献立を構成していました。ところが、その自慢の食材が配送業者の運搬遅れからコンテスト会場に届かず、東京のスーパーで替わりの食材を調達しなければいけない、というハプニングに見舞われました。
それにより、予定食材の豆アジはサワラに、地元の高菜「まんば」は小松菜に、オリーブ豚汁に使う豚肉はオリーブ豚から普通の豚こま切れに、出汁用の地元産カタクチイワシは、いりことなり、調理の行程をすべて見直さざるをえなくなりました。
前日の夜から栄養教諭の谷西さんと調理員の森下さんは、さまざまな可能性を検討し、冷凍サワラからは液体状のドリップが沢山出ることから、切り身の分量を少し多くして、片栗粉もたっぷりと付けて食感を維持し、小松菜は「まんば」よりも灰汁が少ないのであっさりと茹でて和えたり、という工夫を、臨機応変に行いました。 受賞した二人には、長谷川芳樹・審査委員と武蔵エンジニアリング株式会社代表取締役社長、生島直俊さんから、準優勝のカップと副賞の液体精密制御装置メーカー、武蔵エンジニアリングの3Dチョコレートディスペンサーでデコレーションした「チョコプリントクッキー詰め合わせ」が贈られました。 準優勝が発表され賞状が手渡されると、谷西さんは「食材が届かないと分かった時、出場できないかもしれないと思いました。本日は、思い通りの献立が作れませんでしたが、皆さんに集めていただいた食材で、できうる限りのおいしいものを、最後まで笑顔で作ろうと思って臨みました。このような賞がいただけて、本当に感謝です」と、涙声で語りました。
森下さんは、「私の人生で、こんな華々しいことが起こるなんて、びっくりです。協力してくれた皆さんのおかげです」と喜びいっぱいに語りました。
予期しないアクシデントに見舞われたにもかかわらず、全力を上げて対応したことで準優勝を勝ち取った二人の健闘を、馬場錬成・21世紀構想研究会理事長も、閉会の挨拶で特別に取り上げてたたたえました。
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大村智特別賞富山県 高岡市立野村小学校
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- 栄養教諭・濵屋佳美さん
- 調理員・上田裕子さん
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「万葉時代」に思いをはせた献立
高岡市は、『万葉集』の代表的な歌人大友家持が国守として赴任した地であることから、「高岡万葉祭り」が毎年開催されています。野村小学校では、万葉の時代に食べられていた食材を取り入れた「万葉献立」を創りました。 主食は、当時食べられていた雑穀にちなみ、「香紫米」をまぜた「高岡産富富富と古代米のごはん」とし、主菜には富山湾で獲れる代表的な魚「ふくらぎ」(ぶりの幼魚)を焼きました。「かたかご煮」は、かたかご(かたくりの古称)の粉でとろみをつけた、鶏肉、こんにゃく、厚揚げなどの煮込みで、全体としてバランスのとれた彩のよい献立となりました。
「歴史と食文化を取り入れて、彩りよく整った献立になっている。地域の歴史を給食献立から学ぶように工夫されている」という講評をいただきました。荒井寿光・元特許庁長官より、賞状およびクリスタルトロフィーが贈られたのに加え「一期一会」と書かれた色紙と、繰り返し何度も読みたい座右の言葉の集大成著書「まわり道を生きる言葉」(草思社)が贈られました。
ノーベル賞受賞者の大村氏からも、「受賞おめでとうございます。食育は健康と長生きの為に重要な施策です。食育に日々携わる皆様に敬意を表し、ますますの健闘を期待します」というメッセージが届けられました。
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21世紀構想研究会特別賞兵庫県 相生市立双葉小学校
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- 栄養教諭・水谷あゆみさん
- 調理員・森淑香さん
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優れた献立に与えられる21世紀構想研究会特別賞は、兵庫県相生市立双葉小学校が受賞しました。同校の献立には、ごはん、牛乳、とり肉のゆず風味、相生野瀬かんぴょうの炒め煮、若さのみそのみそ汁、ふりカキ、矢野メロンといった品々が並びました。いずれも相生市の特産品や伝統野菜が積極的に活用された料理です。
無農薬栽培のゆず、市のブランド作物となることが期待されている相生野瀬かんぴょう、市内産の米と大豆で手作りされた若さのみそといった食材は、いずれも市内の女性農家グループ「食と農を守るかあちゃんず」が栽培・加工したものです。
また、市の特産品である牡蠣をふりかけにした「ふりカキ」は、県立相生産業高校の生徒たちが開発した食品です。これら、地域の生産者および小学校から高校までの生徒たちを巻き込んだ献立と食育が審査員たちに高く評価されました。
栄養教諭の水谷あゆみさんと調理員の森淑香さんには、小出重幸・21世紀構想研究会副理事長から賞状とクリスタルトロフィーが、小本翔・審査委員から副賞としてショコラティエ・エリカのチョコレートが贈られました。
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女子栄養大学特別賞沖縄県 那覇市立松川小学校
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- 学校栄養職員・金城実可子さん
- 調理員・宮平守さん
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女子栄養大学特別賞を受賞した二人には、女子栄養大学学長の香川明夫審査副委員長と女子栄養大学名誉教授、三好恵子先生から賞状と副賞のクリスタルトロフィ、女子栄養大学の月刊誌「栄養と料理」一年分などがが贈られました。松川小学校では、地場産の食材を駆使した献立で勝負しました。地元で水揚げされた「はなまぐろ」と県産のアーサ(あおさ)を炊き込んだ「アーサとまぐろの炊き込みごはん」を主食とし、「豚肉とパパイヤのしょうゆこうじ炒め」では、18世紀から沖縄で栽培されているパパイヤを使用し、子供でも食べやすい味に調理しています。
「スーネー」は白あえのことで、沖縄豆腐をすりつぶして、甘口の白みそで小松菜を和えました。「おからと美らキャロットのケーキ」は、地域で収穫された規格外の「美らキャロット」と、沖縄豆腐のおからで作ったケーキ。
沖縄県では、過去に4回の出場がありましたが、受賞歴はありませんでした。
今回は、「沖縄県ならではの地場産食材や調味料をうまく活用し、豆腐屋で破棄される「おから」も使用して食材ロスを給食活用し、SDGsの取り組みを学習させることも評価する」という講評をいただき、初めての受賞となりました。
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優秀賞(株式会社日本一賞)岐阜県 高山市学校給食センター
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- 栄養教諭・川原昌士さん
- 調理員・坂巻和正さん
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受賞した二人には、元21世紀構想研究会理事で東京医科大学・中村明子兼任教授と株式会社日本一コミュケーション&テクノロジー戦略本部本部長・佐藤健一さんから賞状とカップ、そして副賞の「うなぎ蒲焼セット」が贈られました。岐阜県では今年「『清流の国ぎふ』文化祭2024」が開催されたことから、清流が育んだ地場食材を献立に取り入れました。
「麦ごはん」には、飛騨の清流が育てたブランド米「飛騨こしひかり」が採用され、「あゆの富有柿たれ」は、岐阜県の県魚であるあゆを揚げ、岐阜県発祥の富有柿の甘じょっぱいたれをかけました。郷土料理の「すったて汁」は、地元の秋野菜を、ゆでた大豆をすりつぶした汁で煮たものです。
高山市立学校給食センターは、大規模給食センター(5664食20校)でありながら、手の込んだ「あゆの開き」を使っており、地場の産物70%の使用率を達成しています。審査委員からは「すべて手作りの丁寧な献立となっていることも評価する」という講評をいただきました。
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優秀賞岩手県 遠野市学校給食センター
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- 栄養教諭・平野沙紀さん
- 調理員・運萬里花さん
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優秀賞宮城県 東松島市学校給食センター
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- 栄養教諭・菅原恵美さん
- 調理員・阿部ことえさん
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優秀賞茨城県 石岡市立八郷学校給食センター
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- 栄養教諭・米田佳美さん
- 調理員・小川茜さん
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優秀賞千葉県 旭市第一学校給食センター
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- 栄養教諭・石井幸恵さん
- 調理員・佐藤智子さん
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優秀賞広島県 広島県立庄原特別支援学校
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- 栄養教諭・杉信龍哉さん
- 調理員・加藤弘美さん
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優秀賞熊本県 錦町学校給食センター
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- 栄養教諭・冨永明希江さん
- 調理員・垣下美千代さん
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第19回全国学校給食甲子園大会は、石川県立明和特別支援学校の学校栄養職員、岡春菜さん、調理員の岩岸美加恵さんのペアが、深紅の大優勝旗を手にしました。
石川県は2006年の第1回大会から出場し、決勝戦出場は今回で8回目という強豪県の一つ。過去には、21世紀構想研究会賞(2006年)、子供審査委員特別賞(2015年)、女子栄養大学特別賞(2022年)の各特別賞を3回、優秀賞を2回、授与されていますが、優勝旗を手にしたのは初めてのこと。19年目で、全国から応募した1051校の頂点に立つ快挙となりました。また、特別支援学校が優勝したのも、初めてです。
賞状を読み上げた銭谷眞美審査委員長から表彰状を、益子純子・株式会社藤江(ふじのえ)代表取締役社長から優勝カップと副賞を授与され、最後に馬場錬成・21世紀構想研究会理事長から、深紅の優勝旗を受け取りました。
審査副委員長の長島美保子・全国学校栄養士協議会会長は、「地域の特性をよく生かした献立と共に、生徒との連携を大切にしているという思いが、心に残りました。特に生徒との対話を通して、生徒が提案したメニュー、アクアパッツァを給食の主菜に仕立てる努力や、生徒が育てた野菜などの食材を自在に活用するなど、発想の転換、自由さが印象的でした」と、たたえました。
県立明和特別支援学校は、石川県の中央部、野々市市にあり、小学部から高等部までの一貫教育を進めながら、給食も一校だけでまかなうという学校です。金沢市や白山市など広い地域から生徒が通学するという特色をいかして、県内の幅広い地場産物を献立に生かす工夫をしています。毎年、「生徒考案献立」を募集しており、今回の地場産のタラのアクアパッツァも、こうしたメニューのひとつ。白山市特産の「堅豆腐」のサラダには、2023年に登録無形民俗文化財に登録された能登の魚醤(いしる)を活用しています。また、高等部の生徒たちが栽培する野菜や、生徒の実習先の農家の協力を得た食材など、全校を上げた給食づくりという特色を大切にしています。
重い優勝旗を手にした岡春菜さんは、「こんな大きな賞を受けるなど、まったく予測していませんでしたので、感激です。この学校に赴任して3年目です。どんな給食を作ったら良いかわからず、生徒たちとも相談しながら色々と考えてきました。生徒たち、地域のひとたちの支えで成し遂げられたことなので、みんなに感謝したいです」と、喜びを語りました。岩岸さんも、「とにかくびっくりしました。いろいろな提案を出してくれる生徒たちに感謝したいです、よころんでくれると思います」と、胸いっぱいの様子でした。
石川県は今年初めから能登地方を中心に大きな地震、水害の被害を受けました。能登のいしるなど、石川県の食材を広く知らせる今回の優勝は、復興を期す地域の人たちにも明るい話題となるに違いありません。