2011年 第6回大会

「どれも鮮やかで彩り豊か。審査難しい」-審査風景

 調理室の隣に設けられた審査室に完成した給食が並べられた。いよいよ食味審査の開始だ。14人の審査委員はまず見た目審査を行う。子どもたちの食欲は見た目にも影響される。全体の色合い、バランスを見る。「年々鮮やかになっている。彩りが豊かだ。バランスがいいから本当に美味しそうに見える」。緑や赤が鮮やかなのは食材が新鮮なおかげでもある。生産者と緊密な連携を取って、給食作りが行われている成果だ。

 試食も行われる。ひと皿ひと皿、箸を付けながら採点していく。「地方ごとに味付けの濃さも異なる。それは特徴でいいと思う。ひとつひとつの料理の味が少し薄くても、全部食べた時にちょうど良くなるように工夫もされている。それにしても美味しくなってきた」。美味しい給食が合い言葉。笑顔で食べてくれることが一番である。

 黙々と試食を繰り返していく。「子どものことを考えて作っているので、全体に味付けは優しい。私は汁ものを中心に評価しているが、それぞれとても美味しい」。審査委員は子どもの立場になって食べていく。味を楽しみ、食感を確認する。「選手のレベルがまた上がった感じがする。審査が本当に難しい」。今年も悩ましい審査が続いた。

女子栄養大特別賞は香川県観音寺市大野原学校給食センターへ

 開会式が行われた会場で審査結果の発表が行われた。全チームが入賞の表彰を受けた後、特別賞の女子栄養大学特別賞から発表された。中国・四国ブロック代表の香川県観音寺市大野原学校給食センターの名前が読み上げられた。栄養教諭の真鍋美枝子さんと調理員の合田香代子さんが壇上に進み、香川芳子・女子栄養大学学長から表彰を受けた。

女子栄養大特別賞の真鍋美枝子さん(右)と合田香代子さん

岐阜県海津市学校給食センターが21世紀構想研特別賞

 次は21世紀構想研究会特別賞。中部・近畿ブロック代表、岐阜県海津市学校給食センターに決まった。栄養教諭の山崎香代さんと調理員・大倉寿美恵さんは緊張の面持ちで、馬場・21世紀構想研究会理事長から表彰状を受けた。

21世紀構想研究会特別賞の山崎香代さん(左)と大倉寿美恵さん

準優勝は初出場の高知県大月町立大月中学校

 残るは優勝と準優勝になった。準優勝は中国・四国ブロック代表の高知県大月町立大月中学校だ。決勝初出場での快挙。栄養教諭の野坂なつこさんと調理員の安岡千冬さんが表彰を受けた。

 涙が止まらない野坂さんは「正直レセプションでは大きなことを言ったが、内心すごく不安だった。何とか結果を持って帰らんといかんという気持ちだった。地元から大きな期待をされて来たので、こうして持って帰れるのがうれしい。もっともっと高知県の給食をいいものにしていきたい。子どもたちに笑顔で報告できると思う」と感激した面持ち。安岡さんは「こんな賞を頂いて感無量です。ありがとうございました」と途切れがちに喜びを表した。

準優勝の野坂なつこさん(左)と安岡千冬さん

優勝の栄冠は和歌山県和歌山市立名草小学校へ

 いよいよ最後。優勝施設の発表だ。「優勝は和歌山県和歌山市立名草小学校」。学校栄養職員の土井登世(たかよ)さんと調理員の山中恭子さんは一瞬驚いたような表情を見せる。大きな拍手が沸き起こった。銭谷・実行委員長が土井さんに表彰状を、津布久孝子・味の素食品事業本部家庭用事業部戦略グループ長が山中さんに優勝カップを渡した。次いで馬場・21世紀構想研究会理事長が歴代の優勝施設名が書かれた優勝旗を贈り、栄冠を讃えた。

 2,057校・施設の頂点に立った感想を求められた土井さんは少し早口で、「山中さんとこの日のために一生懸命頑張ってきた。和歌山も8月の水害で大きな被害を出した。私たちのところは被害がなかったが、子どもたちのために豊かな食材を提供するため生産者の方々はいつも大変な苦労をされていると思う。この賞で幾らかでも生産者の励みに繋がって貰えればうれしい。『先生、布引大根で日本一になってね」と、子どもたちが大きな応援をしてくれた。これで子どもたちや生産者や学校の方々のところにお土産として持って帰れる。本当にありがとうございました」と、感激に声を上ずらせながら喜びを話した。

 山中さんは「日頃と違う調理の中で勝手が違い、失敗をした。反省する点もあったので、学校に帰ったら一から精進していきたい。本日はありがとうございました」と、頂点に立ってもなお前進するプロの心根を見せた。

「応援の子どもたちにお土産できた」と土井登世さん