2009年 第4回大会

岐阜県土岐市学校給食センター

海のない県だからこそおいしい魚をたべてほしい

 中部・近畿ブロック代表はまず岐阜県土岐市学校給食センターの栄養教諭、遠山致得子さんと調理員、熊谷政純さんが登壇した。遠山さんは「地場産業である陶器で給食を食べさせたいと強化磁器食器を給食に初めて導入している。県内産物を使うことでふるさとを愛する心を育ててもらいたいと考えている」と堅く始まったが、五平餅のいわれの説明では2人の紙芝居方式。「昔は家庭でもてなしに作られたが、今では作る家は少なくなってしまった。ふるさとの味をせめて給食で残したいと考えている。それと魚にこだわっている。海のない県だからこそおいしい魚をたべてほしい」と意気込みを話した。

和歌山市立有功(いさお)小学校

子どもたち自慢の世界一おいしい給食

 同ブロック代表の次は和歌山市立有功(いさお)小学校。栄養教諭の高橋啓子さんと調理員の倉八由佳さんがペアを組んだ。高橋さんは「世界一おいしい給食と子どもたちが自慢してくれている。ミステリー給食を月に1回やっており、サツマイモのケーキとかたこやきとかグラタンが人気。また、6年だけ12月と1月にお鍋の給食をする。忘年会と新年会やなぁと子どもたちが言うのですが、5人か6人で一つの鍋になる。白い野菜をたくさん食べられる。運動会のシーズンに食欲が落ちるのでおにぎり給食もやる」と、自慢学校給食を紹介した。

徳島県勝浦町学校給食センター

社会の目線から考えた献立を

 中国・四国ブロック代表はまず徳島県勝浦町学校給食センター栄養教諭、早川良子さんと調理員、岡久美子さんチーム。突然手拍子を求められたと思ったら、正調の阿波踊りで登場し、場内からやんやの喝采を浴びた。早川さんは食育の現場を紹介。「年間計画に基づいて進めている。今回の献立は5年の社会科で食糧自給率に絡めて取り上げた。食料の輸入がストップしたらどう食事は変わるのかを話し合い、自給の重要性を理解した。外国の自給率を知り、日本が一番低いことも理解した。ご飯から地場産に切り替え、現在は38品目が地元産の野菜、果物を給食に取り入れている」と着実な地場産活用の動きを伝えた。

香川県三豊市立詫間中学校

郷土の料理に秘められた歴史の重みを伝える

 同ブロックのもう1校の代表は香川県三豊市立詫間中学校。同県は4年連続で決勝進出を果たしており、プレッシャーも掛かる。チームは栄養教諭の大矢美智子さんと調理員の真鍋こずえさんのペアだ。大矢さんたちは郷土の家庭料理「さつま」にこだわっている。先人の生活の知恵と工夫が込められたこの料理を献立にする理由を家庭にも知らせている。「家で食べたことがあるかと聞くと『ない』という子どもがほとんどだが、給食では定期的に取り入れ、人気メニューになっている。そして子どもたちはこの料理の意味を知っている」と、郷土の料理に秘められた歴史の重みを伝える給食のもう一つの意義をアピールした。

長崎県対馬市の峰学校給食共同調理場

先人のもったいないの意識を生かした献立を

 九州・沖縄ブロック代表の最初は長崎県対馬市の峰学校給食共同調理場。栄養教諭の佐田マキさんと調理員の松村哲子さんのコンビだ。「国境の島から来ました」と佐田さん。「厳しい自然環境の中で食糧事情も十分でなく、餓死者も出た歴史があった。サツマイモのくずいもを繰り返し発酵、乾燥させてさらす保存食『せん』には先人のもったいないの意識がうかがえる。また、捨てられるイカの内臓を活用した『いかんこ』もそうだ。寒い冬を乗り越える料理だ。野菜も新鮮でみずみずしいものがたくさん取れるようになった。あすは対馬を誇りに思う子どもたちのため、頂いた地元の食材に感謝して明日はがんばります」と結んだ。

沖縄県名護市立屋部学校給食センター

地場産物を使い、安全で安心の給食を作る

 12チーム目は同ブロック代表の沖縄県名護市立屋部学校給食センター。学校栄養職員の糸数睦子さんと調理員の喜瀬和子さんの2人だ。糸数さんは「沖縄には長寿をはぐくんできた温暖な気候風土とお年寄りを大切にする地域性と食文化が伝えられている。昔から食べ物のことを不老長寿と考える医食同源の考え方が根付いている。給食ではこの考えを大切にしながら新しい視点でのメニューの開発を進めている。生産者との交流機会を通じて生産者の苦労が分かり、感謝の気持ちを持ってほしいと願っている。明日はパパイヤなど地場産物を使い、安全で安心の給食を作る」と決意を述べた。

 どのチームからも給食に懸ける志がひしひしと伝わってくる。歴史が詰まった郷土の食を絶やしたくない。地元の食材を活かし、健康を守ってきた智恵の営みの結晶だからだ。この食文化の伝導者のエネルギーは子どもたちの「おいしかったよ!」の一言。明日は審査員に「おいしかった!」と言わせてみせる。