2008年 第3回大会

「日本型の食事、食文化を伝えたかった」〜応援の調理場長とガッチリ握手〜

 優勝した岐阜県多治見市共栄調理場の松原恵子さん、水野はるみさんのチームには強い思い入れがあった。それは多治見の給食の先輩からも言われてきた日本の食文化の伝承だ。多治見に伝わる日本型の食事を守ろうと魚の一匹付けにこだわる。今回は鮎の塩焼きを献立に載せた。「低学年は骨を嫌がる子もいますが、だんだん気にしなくなります。魚の姿を知ることが大切だと思っています」。だから一匹付けでなければならない。鮎が給食に登場するのは年2回。塩焼きと甘露煮だ。
 20年以上前から調理場で梅干を漬けている。パックでしか知らない子どもたちは興味津々。「日本人の知恵が詰まっていると思うのです。それを子どもたちに伝えていきたい。今回それが評価されたのならこんなうれしいことはありません」。給食歴27年、松原さんの揺るぎない信念だ。
 水野さんは「鮎の化粧塩に気を使いました。見栄えも大事だから。安全面、衛生面は日ごろから特に気をつけています。洗い物を外してもらって練習した甲斐がありました。すごくうれしいです」。17年のベテラン調理員も緊張が解けてホッとした様子だった。
 松原さんたちは3回目の挑戦だった。1回、2回と選考段階で落ち、決勝大会は初めて。「夢のようです」。そこに応援に駆けつけた寺嶋一博場長が走りよりガッチリ握手。「ありがとうございました」。涙がこぼれた。

「献立のレベル上がった。胸張って帰って

 恒例の講評を女子栄養大学短期大学部の金田雅代教授が行った。「3回目になってさらに充実し、献立のレベルが上がった。とても素晴らしいコンクールだった。審査は学校給食の基準に合っていることがまず大切。地場産物を活用していても、カルシウム、鉄分、食物繊維、塩分などがきちんと摂取されるようになっていないといけない。また、給食が食の授業と関連付けられて、生きた教材になっていることが必要」と、見た目や味だけではない給食の意義に気を配るよう求めた。さらに「主菜と副菜の区別や献立全体での味の組み合わせ、彩りにも注意してほしい。声掛けの徹底や工程表の工夫。整理整頓も大事なこと」と厳格な審査をうかがわせた。そして「今回決勝に出場されたチームはどこも素晴らしかった。差は本当になかった。みなさん胸を張って帰ってください」と24人の健闘を称えた。

感動的大会をありがとう

 最後に特定非営利活動法人21世紀構想研究会の馬場錬成理事長が「とても感動的なコンクールになった。選手のみなさん本当にありがとう。紙一重で、ほかの人たちにも賞をあげたかった。支援してくださった企業、団体、個人の方々にお礼を申し上げたい」と述べ、締めくくった。

給食のドラマは続く。また来年

 熱い戦いは終わった。興奮の余韻を残しながら全員で記念撮影。どのチームも胸を張っている。「子どもの食は私たちが守る」。食の安全がゆらぎ、食料自給率への不安が広がる中でも、ガッチリと生産者と手を組み、食の大切さを子どもたちに伝えている自負があるからだろう。子どもたちも忘れない。郷土の味を伝えてくれた給食のプロの仕事を。新鮮でおいしいメニュー作りに知恵を絞る苦労を。
 次も全国で活躍する給食のプロたちの工夫を凝らした新たな献立が登場するはずだ。来年も給食のドラマは続く-。